楓(カエデ)

 秋も深まってくると、辺りの山々は何とも
 言えない良い色に染まってくる。その中で
 も特に目立つのがカエデである。色ももち
 ろんだが、赤ん坊が手を広げたようなその
 形に心を引きつけられる。

 カエデの木は建具の材料として使われて
 いた。同じ材料として使われた、クルミやカ
 シの木はその数が減ったのだけれども、カ
 エデはどこでも見かける。目立つからすぐ
 に切り倒されて数が減るのは、カエデの方
 ではないの?なぁんて思ってしまうのだが・・・。

 人は、目立っていても私の目を和ませ、
 やさしく包み込むような雰囲気をもっている
 カエデを切り倒すことなく残したのだろう。

 仏教の言葉に『和顔愛語(わげんあいご:
 やわらかな笑顔とあたたかい言葉)』とあるの
 だが、カエデは私達にそれを語りかけている
 ようである。


コーナー表紙へ Home